米寿温泉デイサービス運営事業ファンド

株式会社テルメディ

営業者=株式会社テルメディについて

利用者とその家族・働く人・地域・温泉事業者、すべてのステークホルダー幸福度を高める軽度介護認定者向け温泉デイサービスで介護エコシステムを豊かにする



■サマリー
 
・どのような事業か
地域の軽度介護認定者向けに地域の温泉という資源をデイサービスとして利活用する事業(通所介護事業)
 
・どのような課題を解決するか
軽度介護認定者の外出機会損失による介護度悪化
軽度介護認定者、男性利用者のデイサービスコンテンツ不足
収益悪化や後継者不在による温泉事業者の経営困難化
 
・事業のビジョン
各課題を複合的に解決し地域の健康・介護エコシステムのハブになる
 
・どのようなメンバーか
地域経済と健康事情に精通したテルメディとその親会社である八戸東和薬品のメンバー
 
・プロジェクトにかける思い
地域の誰もが恩恵を受ける“5方よし”の新たな介護ビジネスを広めたい
 
■事業概要

温泉×軽度介護認定者向けコンセプトで「介護の入り口」を広げるデイサービス事業
 
テルメディ(以下、当社)では、地域の温泉施設を有効活用した軽度介護認定者向けデイサービス事業(通所介護サービス事業、以下、本事業)を展開していきます。
 
ビジネスモデルの基本的なコンセプトは、後継者不足や経営難によりすでに廃業、もしくは廃業を検討している温泉施設を賃貸し、軽度介護認定者向けデイサービスとしてリノベーションすることで収益化を実現。その過程でさまざまな社会的課題を複合的に解決しつつ、最終的に持続可能性を持つ地域の介護予防拠点として機能させていくというものです。
 
既存のデイサービス事業の多くは、「要介護2以上がメインターゲット」「1回の利用時間が長く、レクリエーションプログラムの多くは女性向け」という特徴を持っています。一方、本事業では、「要支援、要介護1の軽度介護認定者をターゲット」にし、「短時間」かつ、「温泉」というコンセプトで、業界内に不足している軽度介護認定者向け、また男性向けサービスを主に提供していきます。高齢者が低介護度の段階から気軽かつ満足できる介護サービスの仕組みを拡充することで、未病や健康年齢の増進を実現していくことが目標です。
 



本事業の運営者である株式会社テルメディの親会社である八戸東和薬品株式会社は、昭和59年(1984年)に創業された企業で、ジェネリック医薬品の卸売業を展開してきました。創業から40年が経過した現在、200件を超える保険薬局、150件を超える診療所、病院などを中心に幅広く商品を提供させていただいています。
 
当社は企業向けサービスを長らく展開するなかで、「地域の最終消費者の皆様と直接接点がある新事業を立ち上げたい」とかねてから考えてきました。そして今回、当社拠点である青森県内での地縁が繋がり、地域の方々と縁の深い米寿温泉(詳細後述)を活用した軽度介護認定者向けデイサービス事業の立ち上げが実現することになりました。
 
当社は、産業構造の変化や地域・時代の需要を複合的に捉え解決していくことで、関わる人々すべてが恩恵を享受できる循環型ビジネスを構築していきます。


解決を目指す課題

衰退する地域の温泉施設を有効活用し介護サービス市場のゆがみを整える


当社は本事業を通じて主にふたつの課題を解決することを目指します。
 
まずフォーカスする課題は、現状の介護サービス市場の構造、軽度介護認定者向けサービスの相対的不足、それらを原因とした介護予防の難しさと社会保障費の増大です。
 
既存の介護サービスのほとんどは、「要介護2以上の利用者をメインターゲット」としています。理由は利用者の介護度が高いほど、介護保険制度によってカバーされる保険料がより高くなり、介護サービスを提供する事業者にとってビジネス成立の見通しが立ちやすいからです。そのため、相対的に保険料収入が少ない「要支援、要介護1の軽度介護向けサービス」が不足し、軽度介護認定者に対するケアが後回しになってしまうという構造的な課題が生じています。



また現在の介護サービス市場には、軽度介護認定者のなかでも特に男性向けサービスが不足しているという実情があります。結果として男性が社会との接点を失ってしまい、閉じこもり傾向に拍車がかかるという社会的課題が報告されています。なお、高齢者の閉じこもり傾向は死亡リスクを約2倍も増加させるというデータ【※注1】も存在しています。
 
当社では、本事業を通じて「要支援、要介護1の軽度介護認定者向けサービス」および、男性向け介護サービスの拡充を目指します。同セグメントで持続可能なビジネスモデルを構築することができれば、利用者の介護度が高まることを未然に防いだり、健康寿命を増進することに繋がり、ひいては社会保障費の削減などに寄与できると考えています。
 
当社がフォーカスする二つめの課題は、地域の温泉資産・文化の衰退です。
 
一般的に、街中の銭湯や温泉施設の数は年々減少傾向にあるとされています。「一般家庭への浴室、浴槽の普及による利用者の減少」、「経営者の高齢化、後継者の不在」、「燃料費の高騰による収益の悪化」、「スーパー銭湯など大型の施設の台頭」などが衰退を招く要因として挙げられています。
 
当社は、温泉は人々にとって重要な交流拠点であると同時に、地域の歴史を守り伝えていく上で欠かすことができない文化的資産であると考えています。青森県は人口10万人あたりの温泉数が日本でもトップクラスで多い有数の土地です。また、青森県を支える農業、漁業など一次産業に従事する方々にとって、朝早くから仕事をし、疲れをいやすために温泉に通うことは、日常的かつ貴重な生活習慣となっています。近い将来に廃業せざるをえない地域の温泉施設をデイサービス拠点として復活させることで、施設的にもビジネス的にも存続・成長可能にし、介護サービスの発展と地域資産を守るという二つの目的を同時に達成していくのが本事業の狙いです。
 
【※注1】
独立行政法人東京都健康長寿医療センター

■プロジェクトのビジョン

関わる人々の幸福度を上げ介護の新しい選択肢を提供する
当社では、介護サービスの選択肢を増やすこと、また「利用者中心の介護サービス」を実現することをビジョンのひとつに掲げています。
 
前述した通り、既存の介護サービスの多くは介護度が高い利用者を想定しています。必然的に、そのサービス内容も自立的な生活ができないケースが想定されており、軽度介護認定者にとっては過剰介護に繋がるケースが少なくありません【※注2】。必要性がない介護サービスを押しつけることは、利用者に金銭的な負担を強いるのみならず、時に自立心や尊厳を傷つけ幸福度を下げる結果をもたらします。

当社は本事業で支援の立場を徹底。できることを奪わず、「利用者がやりたいこと」をサポートし、心身ともに充実できる介護サービスを実現していきます。そのための施策として、「一回3時間の短時間デイサービス」、「事業者思考のレクリエーションなどを行わない」など、他のデイサービスとの差別化を構想しています。
 
本事業の二つめのビジョンは、介護の現場で働く従業員にも優しい職場を構築していくことです。
 
介護業務は肉体的負担が大きく、腰痛など身体的な苦痛による離職が多い職場です。またサービス対象者が重度介護者の場合、排泄の介助なども必要で、誰でもこなせる業務内容ばかりではありません。紙媒体での記録業務も多く、手間や時間を要するため残業対応も必須となります。それでも、介護事業者が支給する報酬額は負担に比べて高い水準とは言い難い状況が続いています。
 
本事業のように軽度介護認定者を対象としたサービスであれば、介助による従業員の肉体的な負担を軽減することができます。また温泉施設を利用した短時間デイサービスであるため、夜勤もなく、日中の業務時間内に作業を終えることができます。
 
正社員からパートタイムまで、従業員が働きやすい環境を整備し、適正な運営オペレーションで利益を高水準な給与として還元できる経営体質を実現することで、採用や福利厚生面でも事業体としての強みを洗練させていきます。
 
利用者の介護をする家族や親族、パートナー(以下、介護者)が介護疲れから一時的に解放されるための「レスパイト・ケア」に注力していくことも本事業のビジョンです。
 
介護者には「介護認定を受けたが受け入れ先が見つからない」、「被介護者に介護サービスの利用意欲がなく利用してくれない」、「被介護者が閉じこもり傾向になり、結果として介護者が自分の時間を確保できない」「被介護者の介護度の重度化」など、さまざまなストレスや悩み・不安があります。
 
本事業では、被介護者本人が行きたいと思えるようなサービスを提供する事で、閉じこもり傾向を打破。介護者が安心して休めるような時間を生み出し、介護者・被介護者双方の幸福度が上がる選択肢を提供していきます。

そして、この軽度介護認定者向けサービスを「介護の入り口」とし、温泉施設や他のセグメントの介護サービスと連携させることで、地域の健康・介護・経済活性化のハブになることが本事業の最終的なビジョンです。

【※注2】
(読売新聞オンライン2021年3月29日付)


■プロジェクトのターゲットとビジネスモデル

青森県内で該当する介護保険市場規模は約55億円

本事業が当面のターゲットとして想定しているのは、青森県内の「要支援1~2」また「要介護1」の介護保険市場です。該当する軽度介護認定者の数は約3万3300人、適用される保険料の上限額は約55億円【注3】となっています。全国規模ではそれぞれ、約300万人、約5500億円【注4】にのぼります。
 
なお本事業の最初の拠点となる温泉施設・米寿温泉圏内では、同条件に該当する利用者の数は約2000人を見込んでいます。初年度の利用者数の目標は96人、2~3年目 159人を想定しています。
 
【※注3】【※注4】
自治体・政府発行資料を基にテルメディにて試算
 
■ビジネスモデル
本事業は、利用者がデイサービスに支払う利用料および国・自治体から支払われる保険料を収益とします。最初の温泉施設となる米寿温泉のケースでは、当社が温泉施設側に施設利用料を支払います。そのほか、人件費や経費を除いた額が本事業の収益となります。

■料金プラン
 
利用者が本事業に支払うのは介護サービス利用料(一割負担)で1回400円(月額3,200円)です。この1回の利用に対し、国・自治体からは保険料として3,600円が支払われます。利用者が1回サービスを利用するごとに合計4,000円の収益が発生します。この金額には、利用者の送迎、入浴、買い物サポートなど周辺サービスも含まれます。


■競合との差別化・競争力
 
本事業のビジネスモデルは、基本的に他の介護事業所が提供するサービスと大きく異なりません。ただし、軽度介護認定者向けのサービスであるため利用者を取り合う競争が起きにくいこと、また介護スタッフの介助業務などソフト部分のみならず、温泉施設というハードに価値があるという強みがあり、既存の介護ビジネスと異なる差別化要因・競争力となっています。
 
既存の介護事業所は、介護サービスを提供するための施設に対し投資を行います。対して、同事業ではすでにある温泉施設をリノベーションするため、イニシャルコストを低く抑えられることも特徴です。
 
介護度が高い利用者のための介護サービスは、人力や介助業務の多さで保険料を積算し収益を高めるモデルを採用することが一般的です。対して、本事業は利用者ひとりあたりから想定できる利用料・保険料は相対的に少なくなりますが、その分、デイサービスの時間を短くする(利用者の利便性や利用動機を高める理由もあり)ことで、提供回数を稼ぎ、収益を高めて(短くして、一日二回転させる)モデルを採用します。なお当社の親会社である八戸東和薬品では、卸売業の事業部門で生産性改善に長らく取り組んでまいりましたが、そのノウハウを本事業の運営にも生かし効率的なオペレーションを確立していきます。

なお、同プロジェクトは軽度介護認定者向け、かつ温泉を活用した短時間のサービスであるため、資格者やスタッフにとって働きやすい労働環境も実現しています。そのため、求人や採用において競争力があります。実際にオープニングスタッフを募集したところ、1~2週間で採用が完了。子育て世代の女性など、普段であれば応募をためらいがちな環境にある方々からも多数の応募をいただくことができました。

■米寿温泉について
もともと米寿温泉は、江戸時代末期より代々受け継がれてきた土地を創業者が堀り起こし、1983年に温泉としてオープンした施設です。その歴史は約40年にのぼり、地域の方々から長く親しまれてきました。
 
米寿温泉は青森県の主要市である八戸市、十和田市、三沢市の中間にあり、立地的好条件に恵まれています。3市には本事業がターゲットとする軽度介護認定者も多く、デイサービス事業展開する上ではまたとないロケーションにあります。また地域の方々が頻繁に利用する大型商業施設からも車で数分圏内です。高齢者の方々にとって買い物は大きな楽しみですが、介護状態になると外出が困難となり“買い物難民化”するケースが多くなります。米寿温泉は、その“買い物需要”を満たすうえでも好立地にあります。